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認知症のある方に事実を伝えること

アルツハイマー型認知症の診断が下りている大伯母(祖母の姉:93歳)が、クーラーの壊れた自宅で熱中症になった。 
急いで新しいクーラーを注文したものの、この酷暑なので配送も設置もすぐにというわけにはいかなかった。 
届くのは1週間後。それまでは涼しい所で過ごしてくださいと医者に言われ、両親と祖母が住む家にしばらくステイすることになった。 

…という事情を知らずに家に顔を出したところ、大伯母がいて「あら~萌ちゃん!?」。

会うのは去年の11月以来。 
そのときは大伯母宅にある調律の狂ったピアノを私が弾いて、大伯母は楽しそうに歌っていた。
岸洋子の『希望』が好きだと言っていた。
当時私はその曲を知らなかったが、あれから覚えて弾けるようになっていた。
今日弾いたら喜ぶかな。

そんなことを考えていると、大叔母が私の顔を見て続ける。
「萌ちゃん、すっかり大きくなって…ほら、何年も会ってないじゃない?こんなに大きくなってるとは思ってなかったわよ!小さい頃しか知らないから!」

仕事先で認知症のある方が事実と違うことをおっしゃっていても、それを訂正したことはなかった。
その方にとっての事実はそうなのだ、と教わったから。
むしろ
利用者様「お昼ご飯まだかしら?」
職員様「え、もう4時だし次はお夕飯ですよ」
利用者様「えっ、私お昼ご飯食べてないわよ」
職員様「◯◯さん召し上がりましたよ~、今日はハンバーグでしたよ!忘れちゃったんですか?」
といった会話を耳にすると「そんな事実をつきつけなくてもいいんじゃないかなー。私だったらなんて返答するかな、「お腹空きましたか?」とかかなー」などと思っていた。

だから大伯母が「小さいとき以来会っていない」と言ったところで「いや11月に会ったよ」なんて言う気はさらさらなかった。しかし母は割と容赦なく

「やだー、家で萌がピアノ弾いて歌ったじゃない!忘れちゃったの?」

と言う。
それを聞いた私はやっぱり、わざわざ言わなくてもいいんじゃないかなぁと思ってしまうのだけれど、大伯母が思わぬ反応をした。

「あー、そうだったわね!うちのピアノ弾いてくれたんだった。私歌が好きだから!」

大伯母のさらに上の姉が数年前に亡くなり、その告別式でピアノを弾いたときのことについても、母が

「●●さんのお葬式のときだって萌がピアノ弾いたじゃない」

と言うと

「そうそう、そうだった!」

と思い出している様子。

大伯母宅でピアノを弾いたとき、大伯母はとても喜んでくれた。
同席していた母とケアマネさんも一緒に歌ってくれて、私にとって好きな思い出のひとつだ。
これが大伯母にとっても好きな思い出のひとつなのであれば、それを忘れたままの状態でいるよりも、きっかけがあって思い出せる状態の方が幸せなのかもしれないと思うに至った。

大伯母は「物忘れがひどいしボケてきちゃってるっていうのが最近わかってきた」と話している。
そんな大伯母が、好きな思い出を大切にしながら生きていけるように、本当に微力ではあるけれど私にもできることがあるような気がした。

その日は『希望』と『夜明けの歌』を伴奏して、一緒に歌った。
詩吟をやっていた大伯母。前回歌ったときにかなり声が出るなぁ、と思ったのを覚えていたので、『希望』をCマイナーで弾いた。hiE♭まで見事に出ていた。

次回会ったときに「萌ちゃん、こんなに大きくなって!」と言われたら「また『希望』を一緒に歌う?」と返してみようかな。
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