日本音楽療法学会関東支部 地方大会に行ってきました(2)

日本音楽療法学会関東支部 地方大会に行ってきました(1)の続き。

 
音楽を通して発声を促し、嚥下機能の回復を試みた事例
アルツハイマー型認知症の女性。要介護4、長谷川式スケール0点。
ポイントと感じた点が2つあった。

1つ目は評価。日常での話しかけに対する発声・発語および食事の際のむせ込みの頻度と程度を、オリジナル評価指標でご家族が毎日評価されたとのこと。
ちなみに一定期間セッションを行い前後で比較したところ、数値はいずれも向上。嚥下機能の回復度については、医師による評価もあるとさらに良いと思ったが、熱意あるご家族と共同で取り組むことでご家族の「何かしたい」という想いを形にしたのではと感じた。

2つ目はアプローチ。嚥下機能のために発声を促すという取り組みでありながら、ご本人とは言語でのコミュニケーションが難しい。
例えば「一緒に歌いましょう」とお伝えして発声していただく、といったことができないと判断し、まずは楽器演奏でのコミュニケーションから開始。6回目のセッションにして初めて返事のような形で小さなお声を聞いた。その後少しずつ歌唱も取り入れていき、フレーズで発声されるようになったとのこと。 
手段は音楽ではあるが、つまるところ重要なのは関わり方だったのだと思う。 音楽療法士であっても、ケアワーカーやリハ職の方であっても、ご家族であっても、この方とのコミュニケーションがどうしたらうまくいくのか?と試すことができるあれやこれやの引き出しを沢山持っているに越したことはない。 
選曲とか、音楽的な美しさが情緒に働きかける影響とか、そういった要素ももちろんあったとは思うが、発声を引き出せるかどうかの鍵はコミュニケーションそのものにあったのではないだろうか。
   
集団音楽療法参加者への唾液アミラーゼ活性によるストレス測定
(私は普段「集団音楽療法」という表現をしないのですが、発表者の方が用いていらっしゃった文言をそのまま使っています)
 平均13.5人の参加者で行っているセッションの中の数名を対象に、セッション前後の唾液アミラーゼ活性を測定。ストレスを軽減しているか?という研究。

これまで音楽療法や音楽聴取がストレスを有意に低減するという先行研究はあったが、対象を認知症高齢者に絞ったものはなかったとのこと。 結果としては、この研究では統計的有意差はなかった。
「同じ療法を受けてもその効果の個人差は大きく、場合によっては反対になる。また同じ個人に限っても、セッション前の状態に依存して変化の方向はプラスにもマイナスにも変わる(お一人の方は、音楽に参加する前の状態が緊張状態でもリラックス状態でも、音楽に参加した後の数値がだいたい同じところに落ち着いていた)」とのこと。
発表者の方の結論(メッセージ)は「認知症高齢者の方々と音楽やってみんな同じ傾向の結果が出る、ということはない。個性と事前状態にしっかり着目してアプローチしていきたい」ということだった。

音楽聴取、あるいは音楽活動への参加を通して、呼吸・脈拍・脳波・唾液などの生理的反応を調べた先行研究はある程度世の中に出ている。もちろん心理的反応へのアプローチも然り。
私自身やリリムジカが音楽プログラム実施で目指すのは、ご高齢であっても認知症の方であっても、ご本人のできること、好きなこと、得意なこと、その人ならではのことが自然と出てくる場づくりだ。
ご本人にとって心地よい時間であることはもちろんのこと、その場面を見た周囲の方々がプラスの部分に着目したり、ご本人の日常生活で何か習慣ができたりということを期待して行っている。 

ただ音楽を手段にしている以上、音楽が人間に及ぼす普遍的な影響があるのか?というテーマについてやっぱり興味はある。
研究成果をキャッチしたらそれを知って活用しながら上記を目指したい、と再確認。 

今日はここまで。
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